光線研究 第447号 (転載許可済)
ビタミンDは生体において日光の働きによって皮膚で合成されることはみなさんご存知のとおりです。
「夏の間、十分に日光浴をして日に当たっておくと、冬になっても風邪を引きにくい」という言伝えは単なる迷信にすぎないという医者も少なくありません。
しかし、夏に日に当たり合成されたビタミンDがからだに十分に蓄積されていると、日照量が少なくなる冬においてビタミンDの極端な減少はなくなり、その結果感染症に対する抵抗力が低下しないために風邪などの感染症にかかる傾向が少なくなることを意味していると思われます。
この言伝えの根拠は近年のビタミンDの急速な研究の進歩によって明らかにされてきています。
ビタミンDは骨やカルシウムに対する作用だけでなく、生体の免疫機能を強化する作用が認められ、感染予防と悪化防止にビタミンDの有用性が指摘されています。
ビタミンDは現在ビタミンというよりは免疫を調節するホルモンとしての役割を示しています。
健常人で血中のビタミンDの変化を1年間に渡って測定すると、ビタミンDは夏期に高く、冬季に低いという成績が多く報告されており、これらの結果はビタミンD には季節性変動があることを示しています。
この変動は夏期は日照量が多いうえ日に当たる機会も多く、冬期は日照量が少なくかつ日に当たる機会も少なくなるために皮膚で合成されるビタミンDの量に差ができることが理由です。
ビタミンDは魚類などの食物からも補うことができますが、年間を通じてビタミンDの豊富な食事をしていてもビタミンDの季節性変動は認められます。
つまり人におけるビタミンDの補給源は日光によって皮膚で合成されるものがほとんどであるといえます。
英国南極観測隊の隊員において血中ビタミンDを測定した研究が報告されています。
英国出発前は血中ビタミンDは高値でしたが、南極の2ヵ月間続く暗夜の環境ではビタミンDの豊富な食事をしていても血中ビタミンDは低下することが示されています。
つまり血中ビタミンDの濃度を維持するには食事より皮膚でのビタミンD合成がいかに大切であるかが理解できます。
日光の強い光線には種々の弊害も認められています。
しかし、光線療法ではその心配はなく、定期的に実行してビタミンDを一定に維持することができ、特に高齢者や日頃日に当たることが少ない人では病気の予防や健康保持に大切でより重要な意味があると思われます。